ハナイキロク「ハトの豆鉄砲」

地球社会の世相万般をタテ、ヨコ、ナナメから取り上げます

2009-11

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外国人研修制度は日本の恥

《ジャパンタイムズ 時評 日本語版 》0807
                             ハナイ  キロク
米国には正義人道のためなら、同盟国でも率直に苦言を呈する、という美点がある。今月5日の読売新聞にその典型例を見た。米国務省のマ−ク・レーゴン人身売買監視対策室長が、東京での記者会見で、不当な低賃金労働が社会問題化している外国人研修・技能実習制度の廃止を日本政府に提案したことを明らかにした、という記事だ。同室長の来日の背景には、先月初め国務省が発表した2008年人身売買報告書で、日本の外国人研修制度について触れ「日本政府は労働目的の人身売買に法を執行しようとする意思がかなり欠けている」と指摘したことがある。これはまさに国辱ものだ。1年前には米下院が太平洋戦争下の日本軍による従軍慰安婦強制動員を今世紀最大の人身売買事件の一つとして非難する決議を採択した。今回は、この決議ほど大きく報じられなかったが、慰安婦は遠い過去の問題であるのに対し、研修生は現在の問題であるから、こちらの方が重大と言える。
研修生は1年、技能研修生はその後の2年間日本企業で働く仕組み。研修中は労働法を適用されず、月6万円程度の給料しか出ない。その代わり残業はしなくてよいことになっている。技能研修生になると、社会保険法や労働法が適用され、最低賃金も適用される。しかし、職業選択の自由がないため、劣悪な労働条件が固定化されることが問題である。研修生・技能実習生の数は増加の一途をたどっており、2007年には合わせて約20万人に達した。国際貢献とか発展途上国の人材育成などを発足の理念にしているが、実際は農業、建設、漁業、縫製、食品加工など労働集約的産業の人不足解消策に利用されている。
外国人研修生権利ネットワークが関係省庁に出した要請書によると、研修・技能実習生の職場では低賃金労働、時間外・休日研修、賃金未払い、権利主張する者への強制帰国、パスポート・外国人登録証の取り上げ、強制貯金、預金通帳取り上げ、セクシャルハラスメント、私生活の制約(携帯電話、宿泊、社外の日本人との接触などの禁止)、送り出し機関による保証金や管理費の取立て、違約金や損害賠償の予定、などが横行している。
同ネットワークは、これらは労働基準法が禁止する中間搾取、強制労働、さらに刑法や入管法が禁止する人身売買に当たる可能性がある、として当局に改善を求めている。
わたしは、この問題について2001年1月の本欄で一度書いている。インドネシアから研修生を受け入れる財団法人(Imm Japan)の理事長がからんだ汚職事件が摘発されたのがきっかけだった。当時、法務省がパスポートの預かりや強制貯金を中止するよう研修生受け入れ機関に指示を出している。ところが、最近の法務省発表によると、外国人研修・技能実習制度で、不正行為をしていた受け入れ団体・企業は2007年に過去最多の449に達し、前年の2倍になった。この制度は構造的に不正を生み出す要素をはらんでいる、と思わざるを得ない。
 こうした実態にたまりかねた政府各省は、来年の通常国会に向けて研修・技能実習制度の改革を検討している。だが、法務省は治安第一、経済産業省は企業の利益第一、厚生労働省案は労働法重視、と各省がバラバラであるため一致した案を得るのに難航しそうだ。このさい評判の悪い研修・技能実習制度は廃止し、韓国が2004年から始めた雇用許可制を導入してはどうか。韓国は1990年代初めから日本の外国人研修・技能実習制度に似た産業研修制度を実施したが、日本と同じような問題が起きたため、2006年で打ち切った。雇用許可制度は(1)一定期間求人を出して、国内労働者により充足されないのを確認してから、政府が業種ごとに年間の外国労働者受け入れ人数を決める(2)雇用契約は1年ごとに延長し、最長は3年まで。2007年4月現在雇用許可制度により就職した外国人労働者は16万人にのぼる。この制度により雇用にからむ不正も激減し国際的に高く評価されている、という。隣国にいいモデルがあるのに、見習わない手はない。       
来月には経済連携協定(EPA)に基づき、インドネシアの看護師、介護師が来日する。フィリピン政府とも同様の協定を結び、同国の国会承認を待つのみ、となっている。看護師、介護師とも労働環境が厳しいため、離職者が多く、外国人を新しい戦力として期待する病院や介護施設も少なくない。半面、日本看護協会は国内に就労していない看護職員が55万人もいる実情から、日本人看護師の労働条件低下に結びつかないよう求めている。日本介護福祉士会も介護士の処遇向上が先決であると、している。いずれにしても、外国人研修・技能実習制度の2の舞いを演じないよう大事に育てていくべきである。
[この時評は2008年7月28日付ジャパンタイムズ オピニオン欄にInjustice of labor shortagesの題で掲載されています]

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Author:ハナイ キロク
###履歴
新聞記者39年
国際選挙監視6回
海外日語講師1年
大学教師3年
  +++
フルブライト奨学金研究員1年
フルブライト奨学金調査取材2ヶ月
豪州政府奨励金 調査取材1ヶ月
###現在
ジャーナリスト
ジャパンタイムズ・オピニオン欄に寄稿中
(1997年6月から)
###著書
「アメリカ大学事情」(第10回大宅壮一ノンフィクション賞候補)
「アメリカ禁煙革命」
「生きがい求めて地雷の国へ」

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