ハナイキロク「ハトの豆鉄砲」

地球社会の世相万般をタテ、ヨコ、ナナメから取り上げます

2009-11

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政権交代で基地問題打開を

          
《ジャパンタイムズ時評 日本語版 0810》
                                   ハナイ  キロク

◆横須賀市民を2分する騒ぎに発展した原子力空母ジョージ・ワシントンの横須賀軍港配備問題は9月25日同空母が、入港してひとまず平静に戻った。原子炉事故の懸念は当面米軍の安全保証を信ずるしかないが、問題は空母艦載機の騒音対策である。米海軍厚木基地周辺や将来厚木の米軍機を引き受ける山口県岩国市の住民がすさまじい爆音の被害に耐えなければならないことを、日米政府はどれだけ真剣に考えているか疑問である。

◆空母艦載機の訓練に使われてきた厚木基地周辺住民は1976年から爆音に伴う損害賠償、飛行差し止めを求めて訴訟を起こしてきたが、昨年12月提訴した第4次訴訟では原告数は八市7054人と、第一次訴訟の76倍に激増した。艦載機は陸上基地の滑走路を空母の甲板に見立てて、1日に数百回も離着陸訓練を繰り返すため、周辺民家に及ぼす騒音被害が著しい。

◆2006年の日米合意で厚木基地の艦載機は2014年までに岩国基地へ移転することになったが、整備には厚木に戻る必要がある。さらに、岩国配置の海上自衛隊哨戒機が厚木基地へ移転されるため、実質的にはそれほどの騒音減少を期待できない、と原告の市民団体はみている。

◆爆音訴訟は厚木基地に限られるわけではない。嘉手納、普天間、小松、横田でも提起されている。嘉手納では新旧訴訟の原告合わせて6447人、横田も1,2,3次の原告を合わせると6000人の多数にのぼる。これまで爆音訴訟の無かった岩国でも米軍艦載機移駐を阻止する運動の一環として現在の爆音公害に対して市民団体が提訴を準備している。

◆裁判では、米軍機の夜間早朝飛行の差し止め請求もしばしば出ているガ、日本国の支配が及ばないケースだ、としてすべて棄却されている。しかし、爆音被害に対する賠償要求は騒音の程度に応じて認められており、基地反対闘争の有力な対象として、ますます広がる傾向にある。

◆爆音は基地周辺住民だけでなく、日本の納税者全体にかかわる問題であることが、あまり知られていない。日米地位協定によると、民間人に与えた損害は、米国のみに責任がある場合は25%を日本国が、75%を米国が分担する。日米双方に責任がある場合や、どちらに責任があるか特定できない場合は双方が均等に分担するとしている。ところが米国政府は、爆音賠償金に関しては分担金の支払いを拒否し、横田基地訴訟の場合10年以上前に判決が確定し、日本政府が全額肩代わりして支払ったのに、未払いのままである。

◆これに関連して、沖縄県選出の照屋寛徳衆議院議員が地元の嘉手納爆音訴訟の損害賠償金の分担について2004年、2006年の2回にわたって政府に質問主意書を提出した。政府は、日米政府の立場の相違から協議は困難な状況にあると述べ、米国政府との信頼関係が損なわれる恐れがあるとして、両国の相違点について答えなかった。

◆米軍が賠償金を払わないですむとすれば、騒音を自主的に抑制するインセンティブがなくなる。基地返還時に米側の原状回復義務を免除した地位協定の条文も環境汚染に関し同じ問題をはらんでいる。
米軍基地が存在する14都道県の知事たちが、ことあるごとに地位協定の改定を求めても、政府は運用の改善で十分との立場を固守してきた。だが、爆音賠償金だけをとっても、日米地位協定の不備は明らか。疑義が起きないよう米軍の責任を明確にすべきだ。

◆原子力空母母港化の是非を問う住民投票条例の直接請求を2度にわたって否決した横須賀市議会も日米地位協定の早期改定を求める政府あて意見書を全会一致で可決した。
現状は、西部劇で非力な保安官が無法なガンマンに手も足も出ない状態に似ている。

◆麻生首相は国会での所信表明演説で日米同盟の強化を外交の第1原則とする、と明言した。一方、民主党の小沢代表は衆院の代表質問で日米同盟の維持・発展を同党の基本方針とする、としたが、米国と対等のパートナーシップを確立し、より強固な日米関係を築く、と付け加えた。その後明らかになった民主党の衆院選挙マニフェストでは、日米地位協定の改定に着手する、在日米軍の再編経費負担を見直す、としており日本側の自主性を強く打ち出している。

◆日米安保条約も、日米地位協定も米ソ冷戦時代に締結された。その後、世界の政治・軍事情勢は大きく変化し、経済も急速にグローバル化した。このような変化に応じて、日米安保条約や地位協定を再検討し、必要な改定をするのは当然といえる。しかし、長期政権下で、米国といくつかの密約を結び、占領時代の後遺症で米国追随になれた自民党では、外交・安保関係の是正は期待できない。来る総選挙で、政権交代が実現してこそ真の改革が可能になると信ずる。

[上の時評は2008年10月27日付ジャパンタイムズ・オピニオン欄にNosy assaults on livingの題で掲載されています]
                            

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Author:ハナイ キロク
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新聞記者39年
国際選挙監視6回
海外日語講師1年
大学教師3年
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フルブライト奨学金研究員1年
フルブライト奨学金調査取材2ヶ月
豪州政府奨励金 調査取材1ヶ月
###現在
ジャーナリスト
ジャパンタイムズ・オピニオン欄に寄稿中
(1997年6月から)
###著書
「アメリカ大学事情」(第10回大宅壮一ノンフィクション賞候補)
「アメリカ禁煙革命」
「生きがい求めて地雷の国へ」

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